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いやぁ、明日でバイト最後です。
寂しいもんです。
うちのバイトでは、部屋の貸し出しとかを行っておりまして、いつも団体の代表の方が使用許可書を持ってきます。
その中でも一際印象の強い方がおりまして…
40代後半の脂の乗り切ったオバサマです。
ダンスサークルの代表みたいです。
「ダンスは若さを保つ秘訣なんですよ。ブホホホホホ。」
とても人当たりの良い方です。
最近は寒いので、良く暖房をつけてくれとお願いに来ます。
「そんなに寒いですか?」
一応貸し出している部屋まで行って確かめようと思いました。
「ほら、先生が寒がっているんです。」
見ると端の方でうずくまっている30代前半の女性が一人。
エアロビクスで着る様なスパッツとかを着ています。
「ああ、これでは寒いですね。」
暖房をつけて、部屋に確認しに行くと…
「どうもありがとう。おかげで先生も、ほら…」
ヤーッ!ハッ!ハッ!
見ると30代前半の女性が一人、音楽をかけて踊り狂っています。
温度に反応?
かなり怪しい動きをしています。
「そうですか。よかったです。」
ところで先生はインディアンか何かですか?
聞きたいのは山々でしたが、仕事なので我慢です。
先生はエアロビクス出身みたいなのですが、やっている事はフラダンス。
一応練習中は部屋を覗いたりはしていないので、どんな活動をしているのかはわかりませんでした。
しかしその内容を垣間見る機会に恵まれました。
発表会があったのです。
もちろん私のバイト先で開かれます。
ちょっとワクワクしてました。
そして幕が開きます。
もちろんステージ上にはいつものオバサマ達。
いつも以上に脂が乗り切って見えます。
先生も一緒に踊るようです。
全員がステージ上に並ぶとひどいもんです。
先生はとっても細いです。
そしてオバサマ達は…
あれ?
砂時計とボーリングのピンが…
おっと人間でした。
危うく見間違っちゃう所でした。
そのぐらいの差だって事です、先生とオバサマが。
そして音楽が流れ出します。
ハワイアンなゆったりとした曲です。
そして踊り始めるオバサマ達
むごい物でした。
はちきれんばかりのお腹をさらに前に突き出して、クネクネと我が物顔で踊るオバサマ達。
地獄です。
フラダンス?
ご冗談を…
例えるならば、ヘビの踊り。
ヘビ使いが笛を吹くとヘビが踊りだす、あの踊りです。
アナコンダよりはるかに太いヘビですが…
先生も人が悪い。
わざわざこんなダンス躍らせなくてもいいのに。
オバサマ達にもお子様がいらっしゃる訳ですよね。
お子様が見たらどんな事をおっしゃるでしょうか。
「ね〜パパ!ママがダンスするんでしょ?ママうまいの?」
「ああ、うまいだろうね。もう何年もやっているからね。」
「楽しみだねっ!」
そして幕が上がる
「ねぇパパ!あれ、ママなの!?あれがママなの!!?(泣)」
「あ…、ああ。ママだ。ママの生き様をしっかり見とくんだ。」
「ねぇ、パパ!ママ無様だよ!うちのママ無様だよ!!(泣)」
「ママは一生懸命やっているんだ。そんな事言っちゃだめだ。」
「わー!!パパ!!ママがこっちに手を振ってるよ!どうすればいいの!!」
「……無視するんだ。」
こんな光景が見られるんじゃないかと辺りを見渡してみましたが、そんな親子はいませんでした。
もうとうの昔に体験してしまったのでしょう。
私が息子だったら第一次反抗期を迎えます。
そんな楽しい発表会ももう見る事もないでしょう。
やっぱり寂しいですね。
先日、オバサマが部屋の使用後に、報告書を持ってきてくれました。
「あ〜、今日も若返ったわぁ。いいわよねぇ、あなたは若くって。ブホホ。」
今日も不気味な笑い声をあげています。
おっと!!
私は机の脚につまずきました。
泳ぐ私の体。
倒れる!
しかし倒れる直前に机の端をキャッチ!
あと20cmぐらいで地面に転がるところでした。
それを見たオバサマ。
「若さよ…。若いから転ばなかったんだわ。」
「あっはは、恥ずかしい所見られちゃいましたね。」
「若さよ。ブホホ。それが若さなのよ。それが欲しいのよ。」
怪しげなセリフを残して帰って行きました。
もう二度と会うこともないでしょう。
さらばオバサマ
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